「磁石」や「吸水樹脂ボール」の誤飲に注意!

吸水樹脂ボール
子どもがマグネットセットの磁石や水で膨らむボール状の樹脂製品を誤飲する事故が起きています。開腹手術が必要なほど重篤な症状となるおそれがあり、非常に危険です。

 

1.磁石の誤飲事故

(1)誤飲した場合の危険性

磁石は磁石同士、磁石と磁石に付く金属でくっつく性質があります。この特性により、誤飲した場合には、消化管を挟んで引き合って固定され、自然に排泄されなくなることがあります。磁石の圧力がかかった部分の血流が止まり、そのまま時間が経過すると壊死して消化管に穴が開いたり、腸閉塞を引き起こしたりして、開腹手術が必要になるほど重篤な症状を引き起こすおそれがあります。

(2)ネオジム磁石製のマグネットセット

球や立方体の形状の小さなネオジム磁石そのものを、数十から数百個をセットにした製品が、マグネットボールやマグネットキューブ等と呼ばれ、インターネット通信販売サイト等で販売されています。商品名やうたい文句として、「パズル」、「おもちゃ」、「玩具」又は「知育」といった表示が多く見られます。また、磁石に着色したカラフルな製品も販売されています。

マグネットセットには以下のような特徴があるため、誤飲事故にはより注意が必要です。小さな子どもには、マグネットセットを触らせないようにしましょう。

  • 磁石単体の大きさが数ミリと小さく、小さな子どもが容易に誤飲するサイズ
  • 数が多いため、一部が無くなっても気付きにくい
  • ネオジム磁石は一般的なフェライト磁石の 10 倍以上の磁力があり、挟み込む力が強い

 

(3)その他の身近な磁石製品

玩具の中には磁石を使用した製品もあり、破損により内蔵された磁石が外に出て、それを複数個誤飲したことで開腹手術等が必要になった事故も発生しています。玩具に限らず、磁石は身の回りの様々な製品に使用されています。東京都生活文化局「磁石の安全な使用に関する調査報告書」によると、小学校1、2年生の子どもと同居している保護者を対象としたアンケート調査結果では、文房具類や時計・タイマー等に付属した磁石などの磁石製品を保有していると回答した人は9割を超えています。一方で、約 15%の保護者が、磁石製品を「誤飲等した」又は「誤飲等しそうになった」経験がありました。

【事例】

  • 乳児が玩具(ネオジム磁石)を複数個誤飲し、受診。小腸穿孔が複数箇所生じ、手術等により当該玩具を体内から摘出。
  • 幼児が破損した玩具内の磁石を複数個誤飲し、腹部で当該磁石が停滞したため、開腹手術により摘出。磁石で腸管が破れる重傷。
  • 保育施設において、幼児が玩具に使用されている磁石を複数個誤飲したため、手術により摘出し、消化管を修復。

 

2.吸水樹脂ボールの誤飲事故

(1)誤飲した場合の危険性

吸水樹脂ボールに使用されている高吸水性樹脂は、水と接触することにより自重の 100~1,000 倍の水を吸水することができ、一度吸水すると圧力をかけても離水しにくいという特徴を持っています。
玩具として販売されていた吸水樹脂ボールについて、国民生活センターが行ったテストでは、腸液を想定した模擬液に浸漬したところ、胃液を想定した模擬液に浸漬したときよりも、大きく膨らみ、最も大きなものでは直径 15mm 程度のものが 40mm 近くになりました。

吸水樹脂ボールを含む水で膨らむ樹脂製品を誤飲した場合、幽門を通過した後、腸の中で大きく膨らんで、腸閉塞を起こす危険性があります。また、レントゲンや CT 等の放射線画像に写りにくい性質があるため、誤飲したという情報がなければ、対応が遅れるおそれもあります。腸閉塞を起こすと腸が破裂して腹膜炎を起こすなど重症化する危険も伴うため、緊急開腹手術による処置が必要となる可能性があります。

【事例】

  • 乳児が高吸水性ポリマー素材の玩具を複数個誤飲したところ、腹部で停滞し、腸閉塞となったため、小開腹手術により摘出。
  • 体調不良で入院した乳児が手術を受けたところ、体内から高吸水性ポリマー素材の玩具が摘出された。
  • 乳児が高吸水性ポリマー素材の玩具の一部を誤飲したため、開腹手術により摘出。

 

(2)身近にある水で膨らむ樹脂製品

高吸水性樹脂を利用した一般消費者向け商品には、吸水・保水させるタイプとして、紙おむつや生理用品などの衛生用品、着色した鑑賞用のインテリア用品などがあります。また、吸水・ゲル化した状態で販売されているタイプとして、有効成分を添加した芳香剤・消臭剤や虫除け用品、栄養成分を添加した園芸用品などが見られます。
市販品の吸水樹脂ボールはカラフルで子どもの注意を惹き易く、グミやキャンディ等のお菓子と間違えて誤飲する可能性があります。インテリア用品として使用されていた商品でも同様の事故が発生しています。

3.誤飲事故を防ぐ注意ポイント

誤飲した物そのものが尖っていたり、毒性がある場合はもちろんですが、「磁石」や「吸水樹脂ボール」のように、その特性や誤飲後の体の中での変化等により、子どもにとって非常に危険になるものがあります。子どもの身の回りにある物の危険性を認識することに加えて、子どもの発達や行動特性を知り、事故を防ぐための環境を作りましょう。

  • 3歳児の口の大きさは約4cm。これより小さい物は口に入ります
    子どもの口の大きさは3歳児で直径約4cm で、これより小さいものは子どもの口にすっぽり入るため、誤飲や窒息事故の危険があります。
  • 小さな子どもはつかんだものは、何でも口に入れます
    特に3歳までの子どもは口に入れて調べようとする行動特性があります。手でつかめるようになると、身の回りにある物は何でも口に運ぶ可能性があります。
  •  子どもは手に持ったものを、落としたり、叩いたり、投げたりします
    子どもの感覚、運動、認識能力の発達の過程で、手に持ったものに対して、様々な操作を行います。落としたり、叩いたり、投げたりすることは、典型的な行動の例の一つです。その際に、強度が不足していると、破損して誤飲のおそれがある小さな部品が外れる等、子どもにとって危険が生じる可能性があります。

 

このように、子どもが扱う製品は、大人向けの製品とは異なる使用状況が考えられます。以下の点について注意しましょう。

  • 玩具を購入する際は、子どもの発達や安全に配慮されたものを選びましょう
    誤飲するような小さな部品がないか、けがをするような形状や隙間はないかなど、確認しましょう。玩具安全マーク(ST マーク)などの表示を参考にしましょう。
  • 玩具の対象年齢に十分に注意しましょう
    対象年齢に満たない子どもに対しては、その玩具の購入を控え、使用させないようにしましょう。対象年齢以上の子ども向けであっても、対象未満の子どもがいる場合は、購入を控えることも検討しましょう。
  • 日頃から破損などがないか点検しましょう
    安全に配慮された製品であっても、使用状況によっては破損や劣化等によって、誤飲事故につながる小さな部品が外れる等、子どもにとって危険が生じることがあります。
  • 設置や保管は手の届かない場所を選びましょう
    子どもは興味がある物に手を伸ばします。1歳から3歳までの子どもについて、どこまで手が届くのかを年齢ごとに示した例があります。子どもにとって危険なものは、これを目安にして、より遠い(より高い)場所に置いて、子どもが触れないようにしましょう。また、子どもの手の届かない場所であっても、椅子などを踏み台にして取ろうとすることも考えられます。子どもの興味を引くものは、目に触れない場所に置くなど工夫しましょう。
  • 中古品を入手する際には、製品の情報・状態をよく確認しましょう
    近年では、中古品の取引が活発です。リコール対象製品でないことの確認に加え、破損や劣化等の製品の状態や、製造事業者や製造年等の情報をよく確認してください。また、取扱説明書も同時に入手しましょう。

 

4.誤飲時の対処法

子どもが誤飲した、もしくは誤飲の疑いがある場合は、誤飲対処早見表を参考に、医療機関を受診してください。受診の際は、基本的に吐かせずに、誤飲したものと同じものが手元にあれば持参しましょう。また、同型品やパッケージ、インターネット通販での購入履歴などが残っていれば、受診の際に医師に見せてください。

消費者庁資料:「磁石」や「吸水樹脂ボール」の誤飲に注意! 

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